マルチで、友だちを失った話

マルチで、友だちを失った話

25、26歳ぐらいの頃の話。

久しぶりに、
学生時代によく一緒にいたAちゃんと会った。

Aちゃんはサバサバしていて、
グループの中でも特に仲が良かった子。

明るくて、誰とでも仲良くなれる。
なのに、一度も彼氏ができたことがなかった。

そんなAちゃんと恋愛の話をしていた。

「本気で彼氏ほしいんよね。
マッチングアプリ始めようかな。」

そう言うと、Aちゃんが笑って言った。

「私、もうやっとるよ。」

「えっ、Aちゃんが? 意外!
いい人おった?」

するとAちゃんは笑いながら言った。

「いや、出会いじゃなくて仕事のために(笑)」

私は一瞬、意味が分からなかった。

Aちゃんって事務の仕事じゃなかったっけ。

すると、

「言ってなかったっけ?
私、○○始めたんよ。」

その瞬間、
頭の中で「あぁ……。」となった。

○○は美容系のマルチだった。

実はその数年前、
私たちの共通の友人が
同じものにハマったことがある。

そのときAちゃんは、
「さすがにヤバいよね……。」
と言っていた。

その「さすがにヤバい」を、
今度は自分が始めていた。

AちゃんのSNSを見ると、
「無知って怖いよな〜(笑)」
そんな投稿が増えていた。

でも、私にしつこく勧誘してくることはなかった。

だからその話題だけスルーして、
普通に友だちとして付き合っていた。

そんなある日。

「相席屋行こ〜!」
と誘われた。

もちろん私は、
「行く!」
と返事をした。

すると続けて、
「○○広めたくって(笑)」
と送られてきた。

そんなことに巻き込むなや。

私は、
「それなら行かーん。」
と断った。

それでも関係は続いていた。

しばらくして、
またAちゃんから連絡がきた。

「一緒に住まない?」

そのとき私は
男友達とダーツバーにいたので
「いいよ」と適当に返した。

するとすぐに、
豪華な家やクルーザーの写真が
次々と送られてきた。

「こんなの良くない?」
「一緒に稼ごう。」
「一緒に幸せになろう。」

そのメッセージを見て、私は返した。

「幸せになろっていうけどね。

私はAちゃんと、
しょーもない話しよるだけで幸せよ。

やけ、○○しよるうちは、
私に連絡してこんで。」

するとAちゃんは、

「分かった。でも私には、
しなきゃいけないことがある。」

それっきりだった。

もう5年以上たつ。

Aちゃんが今どうしているのかは知らない。

Aちゃんが、
あのとき目指した幸せは、
手に入ったんだろうか。

私は今でも分からない。

でも、
学生の頃。

鼻をつまんで
マリオのジャンプ音を出しながら、
教室をぴょんぴょん跳ねて、
二人でゲラゲラ笑った。

あれは、幸せだったな。

豪華クルーザーには乗ってないけどね(笑)

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