
我が家のいなり寿司担当は夫だ。
夫の気分が乗るか、
私の「そろそろいなり作って」で、
夫のいなり作りが始まる。
冷蔵庫には、
しばらく前からいなりの皮が眠っていた。
そろそろ旅立ってほしい。
今日は、いなり日和な気がする。
でもその日は、
夫が子どもたちを連れて
ワンオペで遊びに行ってくれていた。
なので、ちょっとした貸しを感じていた。
普段なら何も言わず、
「いなり作って」で終わる。
でもその日は、一応聞いてみた。
「今から子どもに読み聞かせする?
それとも、いなり寿司作る?」
ご飯は炊けている。
あとは皮に詰めるだけ。
夫は即答した。
「読み聞かせするよ。」
……そうか。
私は炊飯器といなりの皮の前にどっしり座り、
人生初のいなり寿司作りを始めた。
そして開始30秒で思った。
なんだこの、なんともつまらん作業は。
私の心を一切つかまない。
皮は破れないように気を遣うから、
完全な無心にはなれない。
なのに、やることはずっと同じ。
ひたすらにんじんを切るような単純作業は大歓迎。
でもこれは違う。
神経だけ使う単純作業である。
そして、何個作っても炊飯器のご飯が減らない。
これ、本当にカレーの日と同じ炊飯器?
カレーの日なら、もうとっくに底が見えてる頃よ。
そんな炊飯器を呆然と眺めながら、
昔、ママ友が話していた愚痴を思い出した。
「うちの旦那さ、
シャンプー全然詰め替えないの!
だから私が毎回補充してるんだけど、
この前なんて言ったと思う?
『このシャンプー、全然減らないね〜』
って。」
その話を聞いたときは大いに笑った。
でも今なら、旦那さんの気持ちが分かる。
このご飯、全然減らないね〜。
(だれかご飯、補充してる?)
そんなことを考えながら包み続けた。
しかし
30枚あるいなりの皮を包み終える前に、
私が生涯で包めるいなりの上限に達した。
現役生活に悔いはありません。
もう私は、いなりを包まない。